増築部分の登記をしていない建物の相続登記

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

本日はこんな事例を考えてみます。

・固定資産税納税通知書と建物の登記簿を見比べてみると、それぞれの床面積が異なっている

・建物自体の登記はされているが、増築部分の登記はしていない

・物所有者に相続が発生した

さて、上記ケースですが、ある程度築年数が経過した家屋の場合によくあります。

増改築の登記をしなかった場合でも、課税通知書に現況の床面積が記載され、登記簿と情報が異なるのは固定資産税課が様々な方法で確認をしているからです。

このような場合において、相続人としてはどのような対応を取るべきなのでしょうか。相続をした後にその家屋をどうしたいのか、という点にフォーカスして考えてみます。

相続人が住む

この場合は増築の登記をするべきです。増築したままその登記をせず放置してしまうと、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。

・過料に課せられる

不動産登記法において、増築後1か月以内に登記を行わなければ10万円以下の過料が課される旨が法定されております。

・売買できない

絶対に売買ができない訳ではありませんが、買い手を見つけることが困難になるでしょう。

・リフォームしようとしてもローンが組めない 

ローンを組む際、金融機関が抵当権者となり登記申請を行うケースが多いですが、増築部分が未登記であれば金融機関はローンを認めないため、リフォームの際の資金調達が困難になります。

以上の点を踏まえて、増築の登記は必須と言えます。

誰も住まないので売却をしたい

誰も住まない実家を売却し、その代金を相続人で分け合うのがゴールです。

このケースにおいては増築登記をすべきと考えます。そうしないと不動産の買い手を見つけるのが困難になります。また買い手が売買代金を調達し抵当権を設定する予定の場合、増築登記をしていなければ銀行は融資に応じません。

増築登記申請をするのは相続登記の前後どちらでも構いませんが、相続登記後に増築登記を行う場合は遺産分割協議書に「未登記部分も○○(不動産を取得する者の名前)が取得する」というような文言を記載しておくと良いでしょう。

建物を解体したい

この場合、わざわざ増築登記をした上で建物を取り壊すのはもったいないと感じますが、このケースでは増築登記をする必要はありません。さらに言うと相続登記をすることなく、相続人の1人から建物滅失登記の申請をすることができます。

滅失登記には登録免許税がかからない(相続登記は免許税がかかる)ため、相続登記をせずに滅失登記を申請する方が経済的と考えます。

ただし、建物に抵当権などの担保権が設定されている場合は要注意です。建物が滅失すると担保権も消滅してしまいます。この場合おそらく完済している可能性が高いと思われますが、無用なトラブルを防止するためにも金融機関に確認をするようにしましょう。


いかがでしょうか。増築登記が不要なのは、建物を滅失させる場合のみです。ただし、その場合でも敷地部分について借地でなければ相続登記をする必要性があるなど、様々な法的判断をせまられますので、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に相談されることをお勧めいたします。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。