人が亡くなったときにすべき手続③

前記事では、相続が開始した後にすべき手続のうち比較的期限の短いものを解説しました。→こちら

今回は期限がないけれど、早めにしておきたい手続について書きます。

1.遺言書の調査

遺言書にはいくつか種類がありますが、実務上ほぼ以下の2つ以外使われることがありませんので、その2つを中心に解説します。

自筆証書遺言 → 被相続人が自書で作成した遺言書です。しまっている場所がわからない場合など、仏壇や金庫などを探してその有無を調査する必要があります。封がされていてもされていなくても家庭裁判所の検認手続が必要になります。また封がされている場合、検認前に開封してしまうと過料が課されますのでご注意ください。なお法務局にて自筆証書遺言を保管する制度が始まっておりますので、法務局からの通知がなく保管の有無を確認したい場合は、遺言書保管事実証明書の請求が必要になります。

公正証書遺言 → 被相続人が生前に公証人役場などで公証人の関与を経て作成した遺言書です。相続が開始した後に公証人役場から通知などは来ませんので、その有無についてはお近くの公証人役場にて遺言検索システムを用いて検索をすることで、全国どこかの公証人役場に保管されていれば、その内容の閲覧はできませんが、近隣の公証役場にて謄本を請求することができるようになっております。なお検認の必要はありません。

2.相続人の調査

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得することで、その相続人が確定します。

様々な相続手続において必要とされますので、早めに取得することをお勧めします。なお、これまでは本籍地の市区町村役場でしか戸籍を取得することができませんでしたが、令和6年3月1日からは本籍地以外の役所でも戸籍が取得できるようになりますので、活用してみてはいかがでしょうか。

3.財産目録の作成

被相続人が有していた不動産、金融機関預貯金、有価証券、借金などの負債を調査し、それらをまとめた財産目録を作成する必要があります。そうすることで、遺産分割協議や相続放棄等の手続を進めることができるようになります。

4.遺産分割協議

相続人調査をし、相続人が確定しましたら遺産分割協議を行います。多くの場合、確定した相続人は予想通りですが、まれに全く知らない相続人が戸籍上に現れる場合があります。その場合でもそのような相続人を除外して遺産分割協議をすることができませんのでご注意ください。なお、遺産分割協議は全員が集まってする必要はありませんが、遠方に住んでいるようなケースの場合は先延ばししてしまい、結局権利関係が複雑になってしまうこともあります。また、相続登記義務化の兼ね合いもありますので、早めに動くことをお勧めします。

5.各契約の名義変更・解約

運転免許証の返納、携帯電話の解約、クレジットカードの解約などいくつか被相続人が有していたものの中には承継できないものもあります。そのようなものも早めに処理をしてしまいましょう。例えば引き落としになっているものなどは、特に早めに解約をする必要があります。金融機関口座の手続を行う際、戸籍の束を数セット持っていない場合(数セット持ってるケースはあまり無いです)は同時並行的に進められるよう、法定相続情報一覧図などを作成することもご検討ください。

また、水道光熱費などで被相続人名義の金融機関口座から引き落とされていたものなどは、金融機関口座を凍結される前に振替口座の変更をしておきましょう。

以上が期限のない手続の解説となりますが、戸籍の収集や遺産分割協議などは、その他の手続を考えると実質的に期限のある手続と考えてよいと思います。結局のところ早めに動くことをお勧めいたします。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。