会社役員の変更登記

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

当サイトでは相続に関する記事を多く扱っておりますが、今回は商業登記に関する記事を掲載いたします。

会社・法人については、その組織を立ち上げる際に設立登記をすることにより法人格を取得します。そうすることで、権利能力を備えることになります。分かりにくいかもしれませんが、権利能力とは、法律行為の主体となることができる能力のことであり、例でいうと、会社を設立することにより契約ごとの名義人となることなどができるようになります。

そして、その第一歩が設立の登記です。設立登記を行い会社を設立しますと、その後登記義務が発生します。具体的には役員変更等をした場合に、変更した日から2週間以内にその登記をしなければなりません(会社法第915条第1項)。この登記すべき期間の経過後に登記申請をしたとしても、当該期間内の登記申請を怠った代表取締役は、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります(会社法第976条)。

実際に数年経ってから登記をした際に過料決定の通知が来たという事例を見たことはあります。2週間を少し過ぎた程度では過料が課される可能性は少ないと考えられますが、役員変更と登記手続はワンセットで考えておいたほうがよいでしょう。

前置きが長くなりましたが、タイトルにある通り本記事では日本で最も多い、「株式会社」の役員変更登記について解説を加えます。

会社役員とは誰を指すか?

株式会社における役員ですが、「取締役」「監査役」「会計参与」を指します。ちなみに会社によっては「執行役員」という役職を設けている会社もありますが、これは会社法上の役員には当たらず、登記簿に現れませんので登記する必要はありません(そもそも登記できません)。

なお、似て非なる名称で「執行役」というものがありますが、これは登記が必要になります。しかし、執行役が置かれるのは、「指名委員会等設置会社」という形態の株式会社のみであり、指名委員会等設置会社は日本において100社にも満たない(株式会社の数が370万社ほど)ため、ここでは割愛します。

上記以外では、代表取締役・会計監査人が登記の対象となります。代表取締役は取締役であることが前提なので会社法上の役員ですが、会計監査人は役員ではありません。

同一人物が役員でも変更登記は必要か?

必要です。ほとんどの株式会社においては株式の譲渡に制限規定があります(非公開会社と呼ばれます)。非公開会社においては定款に定めることにより、取締役・監査役・会計参与の任期を最長10年までとすることが可能であり、定款にその定めがある場合は、例え同一人物が取締役の任期を続投する場合でも10年ごとに「重任」の登記が必要になります。

なお、定款に任期を伸長する旨の定めが無ければ、取締役・会計参与は2年、監査役は4年、会計監査人は1年ごとに重任登記が必要になります。

登記に必要な書類はなにか?

状況によって異なりますので、最も簡易なケース(取締役の1人会社)で定時株主総会にて取締役の任期が終わり重任登記をする場合の必要書類です。

①登記申請書

②株主総会議事録

③株主リスト

[④就任承諾書](重任なら添付不要な場合あり)

これに対し、新たな取締役や監査役が就任する場合は、就任承諾書や本人確認証明書などが必要になります。

登記をしないとどうなるのか?

前述の通り、登記を怠った場合、会社代表者に対して過料が課される可能性があります。その他にも、最後の登記から12年間が経過した場合に、法務局から会社が休眠状態でないかという通知が来ます。その通知に対して何ら回答をしなかった場合、法務局の職権により会社が解散したものとみなされ、解散の登記がされることになります。解散の登記から3年以内であれば、会社継続登記をすることが可能ですが、余計な手間と費用が掛かりますので、やはり変更が生じるたびに登記申請をするということを考えておいた方がよいでしょう。


今回は、役員変更登記について執筆しました。もし役員変更登記を放置している心当たりがありましたら是非ご相談ください。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。