古い担保権の抹消

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

不動産の相続登記のご依頼を受けた際、まず登記情報(PC上ですぐに取得できる登記簿のようなもの)を取得し、不動産の権利関係を確認します。

その際、昭和40-50年代の抵当権が残っていることが多い印象です。東京から移り住んできてからの印象ですので、もしかすると北海道は抵当権を抹消せずに残っている不動産が多いのかもしれませんし、単に偶然そういった不動産のご依頼を私が受けているだけかもしれません。

ところで、そのような場合どうすればよいのか。相続登記をされる際にお悩みになられる方も多いかもしれませんのでその方法について解説いたします。

例えば昭和50年設定の抵当権が不動産についており、相続人がそれを知らなかったという場合(知らないことが通常)ですが、まず金融機関に相談されるのが一番良いでしょう。登記情報や登記簿に差押えの登記が入っていなければ、その抵当権の原因である債務は返済済である可能性は高いことが考えられます。金融機関に連絡することで必要書類を再発行していただくことが可能ですが、金融機関によって用意しなければならない書類が異なる可能性がありますので、その確認の意味でまずは問合せをしてみましょう。なお、相続登記をしておくべきか否かについては、登記事項証明書を求められることが多い関係で、相続登記をしておく方がスムーズかと思います。相続登記義務化の流れもあり、相続登記をしないという選択肢がありませんので予め相続登記をしておいた方が良いというのが私の見解です。

金融機関の基本的な対応としては、解除証書(弁済証書)・登記委任状を再発行し、金融機関の印鑑証明書を交付してくれる流れになると考えられます。※この場合に、登記済証(いわゆる権利証)は、再発行されません。

なお、金融機関の抵当権がある程度古い場合、その金融機関自体が吸収合併により消滅している可能性があります。その場合、いつのタイミングで返済が完了しているのかにより、金融機関が取る対応が異なります。

「A信用金庫(Bに吸収され消滅)→B信用金庫(Cに吸収され消滅)→C信用金庫」というケースがあったとして、A信用金庫の抵当権が残っていた場合、A信用金庫時代に債務を完済していれば、単純に「抵当権抹消登記」をすることで抵当権を抹消することが可能なため、解除証書(弁済証書)が再発行されることになると思います。

しかし、BまたはCへの合併後に債務を完済していた場合は、抹消登記前に吸収合併による抵当権移転登記をしなければならず、手続が煩雑になってきます。そして現存している金融機関(事例ではC信金)では債務発生時は当事者でなく、なおかつ古い情報であるため、返済記録がない場合もあります。そのため、どのような対応をしていくかはC信用金庫に問合せをすることから始めることになります。なお、問合せをしてから回答があるまで数日かかることもあります。

ここまで解説をしましたが、抹消登記の登記申請書の作成については状況によっては特殊な記載になりますので、相続登記をされる中で古い抵当権が見つかった場合は、専門家にご相談されることをお勧めいたします。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。