取締役会非設置会社の代表取締役の選任・辞任について

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

役員登記実務を行う際の印象ですが、平成18年以降に設立された比較的新しい会社の場合、取締役が複数人いても取締役会を設置せず、代表取締役を互選で定めている会社が多いです。そこで取締役会「非」設置会社の代表取締役の選任・辞任方法について解説をしていきます。

各自代表が原則

特に代表取締役を定めなければ取締役全員が代表取締役となります。これが基本形であり、取締役を選任した際、全員が代表権を持つ取締役として就任し、取締役と代表取締役の地位が一体化しているイメージです。従いまして、各自代表の場合、代表取締役の地位のみを辞任することはできません。

定款で代表取締役を定める

これもあまりないパターンです。会社設立時に設立時代表取締役を定款で直接定めているケースはありますが、それ以降の代表取締役を定款で定めていることはほぼありません。定款で選任すること自体は簡単なのですが、辞任する場合に定款を書き換えなければならず、そのために株主総会を開催して特別決議を得て定款を書き換えなければなりません。これはあまりに迂遠な方法ですので、この方法を採用している株式会社はそう多くないのではないでしょうか。

株主総会で定める

これも当事務所においては少ないパターンです。株主総会で定めることができるので、代表取締役の選定方法としては簡易と言えるのではないでしょうか。ただし、株主間で派閥争いがある場合は紛糾しそうですが・・・。

この方法によって選定された代表取締役が辞任する場合、辞任についての承認決議が必要になります。この承認決議の株主総会議事録について、文献やネット記事など情報を集めてみましたがあまりクリティカルなものが見つからなかったので、全体としてもそれほど多くはないかもしれません。

取締役の互選

取締役が話合って代表取締役を決めるという方法です。取締役の決定書を提出することで代表取締役の就任の登記をすることができます。別途就任承諾書と定款を添付する必要もあります。なお、代表取締役の地位の辞任のみも可能で、この場合は辞任届を提出する必要があります。


なお、「取締役の互選」以外の方法で代表取締役を選定した場合、代表取締役としての就任承諾書は不要とされています。これは各自代表のところで解説したように、取締役と代表取締役の地位が一致しており、「代表権を持つ取締役として就任」→「定款・株主総会で代表権をはく奪」というイメージで、取締役としての就任承諾に代表取締役としての就任承諾が含まれているためです。少しややこしいですが定款・株主総会で選定された代表取締役とは「取締役の誰かに代表権を与えたもの」ではなく「代表権をはく奪されなかった取締役」です。

ただし、代表取締役としての就任承諾書を作成しておく方が有用になることも多いため、当事務所では状況を見て就任承諾書を作成しております。

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投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。