古い担保権を抹消してみた
札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。
以前の記事「古い担保権の抹消」を執筆していた時点で、昭和50年代の抵当権の抹消の手続を何件かおこなっておりました。
全て抹消手続は終わったのですが、それなりに古い抵当権であったため時間がかかってしまいました。その中で、吸収合併によって既に消滅している金融機関があり、完済の時期によっては抵当権の移転登記をした上で抹消へと繋がりますのでまずは金融機関に連絡をすることから始まります。
今回の事例
土地建物について相続登記を行う際の事前調査で、昭和後期の抵当権が抹消されずに残っていることが確認できました。この抵当権は住宅ローンと同時に設定した抵当権で、すでに完済されていると思われます。しかし相続人の方も抵当権を把握しておらず、返済時に金融機関から届く抵当権の抹消書類も不明であるパターンが多いようです。
金融機関について調べる
昭和後期の抵当権ですので、そもそも抵当権者である金融機関が存続していないことがあります。今回はまさにそのケースで、
「当初の抵当権者A信用組合(Bに吸収され消滅)→ B信用金庫(Cに吸収され消滅)→ C信用金庫」という変遷をたどっています。ちなみにいつ吸収合併が起きたのかはWikipediaや金融機関のHPなどで確認できることが多いので、大まかに知るには丁度いいですが、Wikipediaなどは正確でない可能性がありますので、あくまで大まかに知りたい場合に使うと良いでしょう。
金融機関に電話連絡
抵当権者を承継している法人がわかりましたら、そこの本店営業部などに連絡をします。今回のケースでは、C信用金庫本店営業部へ電話しました。そうすると、「A信用組合の件については、当金庫の何某支店が担当ですのでそちらにご連絡ください」と案内がありました。さっそく何某支店へ電話をしてみます。事情を伝えると、本件の担当者となる方から必要書類の案内をされます。
抹消書類再発行のための必要書類
※これは金融機関により必要書類が異なりますのであくまで参考程度にご確認ください。
1.相続登記完了後の登記簿(オンラインで取得した登記情報)
2.印鑑証明書
3.身分証明書のコピー
4.書類再発行のための委任状
上記を担当者宛にFAXしました。
抹消書類が到着
後日2~3週間後、以下の書類が到着しました。
1.抵当権解除証書
2.委任状(金融機関から司法書士に対する登記の委任状)
3.合併登記簿謄本
4.金融機関の代表者の印鑑証明書コピー※登記申請時に提出しませんが、委任状に押印された印影と照合するために送っていただきました。
必要書類を添付して登記申請をする
今回は以下の形でオンラインによる登記申請を行いました。実務的なハナシですが、試験勉強の際に行う「〇番抵当権抹消」という書き方はせず、受付番号で抵当権を特定しますので「抵当権抹消」とだけ記載します。
抵当権抹消のための書類を紛失されているため、登記済権利証も無くしているはずです。そのため今回は金融機関に対する「事前通知」という方法が取られますが、これは金融機関が対応するものですので、特に気にする必要はありません。
合併証明書ですが、これはB信用金庫の登記簿謄本が該当します。古いものなので金融機関が貸してくださいました。そこにA信用組合を合併した事実が記載されていること、またC信用金庫の会社法人等番号を記載することでB信用金庫を吸収合併した事実が把握でき、A信用組合が現在のC信用金庫に繋がっていることが証明できます。なお、事前通知制度を利用しておりC信用金庫の印鑑証明書を本来提出する必要がありますが、これは会社法人等番号を記載することで省略できます。
上記で登記申請を補正することもなく無事に抵当権の抹消登記が完了しました。
印象として北海道で相続登記申請をした際に、抵当権が残っているケースが多く見受けられますので、相続登記の際にこれを抹消することをお勧めいたします。
投稿者プロフィール
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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。
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