遺産に株式がある場合③
札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。
前回、前々回に引き続き株式の相続についての解説です。今回は、非上場の未公開株式についてです。
前提として
株式というと、証券会社や証券取引所を通じて売買される株式市場をイメージされる方が多いと思います。そのような場所で取引される譲渡制限がない株式を「公開株式」と呼び、逆に譲渡制限がついている株式を「未公開株」や「譲渡制限株式」と呼びます。なお、日本の株式会社の99%以上は株式に譲渡制限をかけております。
そこで、譲渡制限株式を相続した場合に、譲渡に制限が掛かっている関係で、売却先を見つけるのが困難なため売却して換価するのが難しいという状況になります。
被相続人がこの「譲渡制限株式」を保有していた理由としては、概ね以下の理由が考えられます。
①被相続人自ら出資した株式会社で、創業者として経営していた。
②当該株式を発行している非上場の会社に勤めていた際に、従業員持株制度等を利用して株式を購入していた。
③取引先、知人等の付き合いで、株式会社の出資者となり発行株式を引き受けていた。
承継手続の流れ
前述した①~③の中で最も多いケースは①です。これを例に解説を進めます。
・相続した株式を発行している会社の株式の管理部門へ問合せをする。株式の所有者が被相続人なので、相続した段階で会社の規模感などはご存知かもしれません。もし問合せ先の部署が分かるようであれば、そこに直接連絡するのが早いでしょう。
・その後、相続したことが分かる書類一式を提供の上で、株主名簿の書換を請求します。概ね以下のような書類が必要になることが多いです。
①相続人を確定させるための戸籍謄本(被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人の現在の戸籍謄本等)
②遺言書があれば遺言書
③遺言書がなく、相続人が複数いる場合は遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
④相続人全員の印鑑証明書
これはあくまで一例で、書類は会社の指示に従って原本またはコピーを提出(提示)することになると思います。
これにより、株主名簿の書換が完了しましたら手続としては終わりになります。
換価について
元々株式に譲渡制限が付いている理由としては、家族経営が多い日本の中小企業において、第三者を内部に引き入れたくないためです。そうすると、相続した株式の売却先が見つかったとしても会社の譲渡の承認機関で譲渡を否決されれば売ることができません。そのため、譲渡承認請求をする際、併せて会社に対して買取請求をしておくことにより①会社が株式を買取る②会社が指定した者が株式を買取るというルートをたどることができます。
なお、会社側から相続人に対してする「売り渡し請求」などもありますが、この点に関して本記事では割愛します。
3回に分けて解説をしました株式の承継方法についてですが、金融機関の手続に比べ煩雑になりますので、専門家にご相談されることをお勧めいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
投稿者プロフィール
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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。
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