遺産分割協議が困難なケースその2

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

前回の続きなのですが、意思表示ができない相続人(認知症の相続人とします)がいる場合、遺産分割協議するのにも成年後見人等の選任申立てが必要となり、なおかつ成年後見人には成年被後見人の財産を確保する義務がありますので、認知症の相続人の法定相続分を下回る遺産分割協議内容や相続放棄をすることを理由として家庭裁判所からの審判が下りることは考えづらいでしょう。

そのため、遺産分割協議を進めるにあたっては、法定相続分を下回らないような形で遺産分割をしていく必要があります。以前のブログでご案内した通り、遺産分割協議には大まかに4つの方法(現物分割・換価分割・代償分割・共有分割)があり、仮に遺産が不動産のみであればいずれの方法を選ぶこともできます。しかし、相続人間の関係性が良好と言えない場合、現物分割及び共有分割は難しく、不動産の売却ができない場合は換価分割はできませんので、ケースによって分割方法を使い分けていく必要があります。

現物分割・共有分割については不動産を誰が所有するかという問題ですのでわかりやすいと思います。

換価分割(不動産を売却して得た金額を相続人で分ける方法)・代償分割(誰かが不動産を取得し、金銭を他の相続人に支払う)により遺産分割協議を行う場合には金銭のやりとりが発生しますが、換価分割は手元の現金を法定相続分で分ける形ですので、これもわかりやすいのですが、代償分割については、その代償金をどのように算定するかが問題となります。

この算定方法には相続税評価などのように定められたルールはないため、実際の取引価格(実勢価格)や相続税評価額を使用することがありますが、遺産分割協議が調わず家庭裁判所での調停を経て審判になった場合は、裁判所は実勢価格で判断するようです。不動産を取得しない相続人としては実勢価格に基づいた代償金が支払われる方が利益が大きくなりますが、逆に不動産を取得する相続人は相続税評価額で算定した方が支払う金額が少ないため、この算定額をどうするかが遺産分割協議の最大の山場になるでしょう。ですが正確な価格を算出するにも不動産鑑定士の鑑定書などが必要になり、作成に30万円程度の費用もかかりますので、建物の相続税評価額(固定資産税課税通知書に記載)と土地の相続税評価額(国税庁のホームページに記載)で話し合いを進めてみることもいいのかもしれません。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。