遺留分とは?
「遺留分」は、遺産のうち、相続人が最低限取得することができる配分のことです。
例えば被相続人に相続人として子が二人(長男、長女)いたとします。
この子たちの相続分として、法令で定められているのはそれぞれ遺産全体の2分の1ずつです。
しかし仮に被相続人が遺言書を遺しており、「私の財産の全てを長男にすべて相続させる」と書いてあったらどうでしょうか。
法律的にはそれでも何の問題もありません。ですが、何も相続することができなかった長女には最低限保証されている取り分があります。これを「遺留分」と言います。上記の例で具体的な遺留分は、法定相続分の2分の1に2分の1を乗じた4分の1となります。
長女としては長男に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。多いケースではまず内容証明郵便を郵送することから始まります。
話し合いのなかで、長男が長女に対し遺留分額を支払う内容がまとまればいいのですが、揉めてしまった場合は裁判所を巻き込んで解決することとなります。まずは家庭裁判所の調停手続を経て、それでも解決しないようであれば訴えにより裁判上の手続になります。話し合いを進めていく中で、相手方が態度を硬化させてしまう場合は弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。
遺留分の具体的な割合や計算方法は、相続人の関係や法定相続分の範囲によって異なるため、個別のケースによって異なります。
札幌法務局サイトより
上記が遺留分割合です。
なお、遺留分侵害額請求には期限があります。遺留分権利者(上記例では長女)が相続が開始したこと及び遺留分を侵害する遺贈や贈与があったことを知ってから1年以内に行使しなければいけません。なお、長女が相続の開始・遺留分侵害の遺贈や贈与があったことを知らなかったとしても、相続開始から10年で遺留分侵害額請求はできなくなります。
なお、この遺留分侵害額請求の制度ですが、民法改正により2019年7月1日から施行されており、それ以前は「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」という名称でした。そのため、相続が発生したのが2019年7月1日以前の場合には、遺留分減殺請求制度が適用され、本記事に手解説した遺留分侵害額請求の対象とはなりませんのでご注意ください。(ほぼ同趣旨の制度ですが、中身が異なりますので別の機会に解説いたします)
投稿者プロフィール
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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。