山林の相続

不動産(土地)を相続したとき、登記簿の地目を見てみると、「山林」となっている場合、土地を管轄する自治体へ【森林の所有者になったときの届出】が必要となることがありますので要注意です。

具体的には、無届だったり虚偽の届出をした場合、【森林法第213条】の規定により10万円以下の過料を科せられる可能性があります。

先日、山林の相続登記の準備をした際の対応について以下に記載します。

まずは山林を管轄する自治体の担当窓口に連絡します。電話でもメールでも構いませんが、私は4つほど質問事項があったのでメールで連絡しました。回答メールが届くまでに数日かかりましたので、急ぎでなく情報量が多くなりそうなときはメールの方がいいと思います。質問事項は以下です。

①当該山林は【森林の所有者になったときの届出】対象か

私が問合わせをした自治体のHPには、届出の対象となる山林は「地域森林計画の対象森林」と記載されておりました。つまり、対象森林でなければ届出は不要なのかと思い、HP上に対象森林の記載された地図がないか探しました。HP上に地図があるにはあったのですが、見方がよくわからず、仮に見方がわかったとしても確信が持てなかったので問合わせをしましたが、よほど明確に対象森林を明示している自治体でない限り、直接問合せをした方が無難でしょう。その際、自治体には「土地の地番」を伝えれば調べてくれるかと思います。

なお、当該地番は対象森林ではないので届出は不要との回答いただきましたので、伝える情報としては地番のみで問題なさそうです。届出の対象森林でなかった場合、当然届出は不要です。

②売却前提の相続登記の場合でも届出は必要か

被相続人が亡くなった後に不動産を売却するにあたり、所有権登記名義人が被相続人なら、相続による所有権移転登記をする必要があります。つまり被相続人から買主へ直接所有権移転登記をすることはできず、一旦相続登記をして、相続人を所有権登記名義人にする必要があります。(被相続人自身が売買契約を結んでいた場合は別論)相続登記完了後、相続人から買主へ所有権を移転させることとなります。

さて、森林法によれば、土地の所有者となった日から90日以内に所有者となったときの届出をしなければならない旨が規定されております。そこで、ごく短い期間の所有者である相続人も件の届出をしなければならないのかという疑問が生じます(所有している機関が短いのだから届出を省略できないのかということ)。その点を確認したところ、省略することはできず、

①相続人が所有者となった旨の届出

②相続人から山林を買った者が所有者となった旨の届出

上記①②の2つの届出が必要とのことでした。煩雑ですがこの点も要注意でしょう。

③届出の提出方法について

当然ながら、自身の住まいから遠い地域にある不動産を相続することは容易に想像ができます。その場合に直接自治体の役所に行く必要はありません。必要書類を持参するのは当然可能ですが、それ以外にも郵送・メールでも受け付けているということです。

これなら届出のハードルもかなり下がりますね。

④提出書類について

以下の書類が必要です。

①届出書→届出者・前所有者の住所氏名、所有者となった年月日、所有権移転の原因(相続・売買等)、土地の所在場所及び面積とともに、土地の用途等を記載します。林野庁や各自治体のHPに様式が用意されておりますので、それをダウンロードして記入しましょう。さほど記入に悩む箇所はないと思います。

②登記事項証明書(写しも可)又は土地売買契約書など権利を取得したことが分かる書類の写し→相続の場合は登記事項証明書、売買の場合でも売買契約書に限らず、登記事項証明書を提出すれば問題ないと思います。

③土地の位置を示す図面→森林なので空撮写真や地図を見ても、場所の特定が極めて難しいです。ですが、法務局で取得することができる「公図」を提出することで要件を満たすそうですので、これを提出するのが一番早いと思います。

以上、【森林の所有者になったときの届出】について作成しましたが、それほど難しい内容ではないことがわかったと思います。地目が山林となっている土地を相続した際は、必ず不動産のある自治体に確認をするよう心がけましょう。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。