権利証を紛失している場合
札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。
先日、不動産登記申請のために必要な書類を収集していた際、権利証が見当たらないという事案がありました。不動産という高額な財産を譲り渡す側(売買であれば売主)については権利証(登記識別情報)に加えて、必要書類への実印での押印と発行後3カ月以内の印鑑証明書が求められるなど厳重です。
しかし、古い権利証などは時の経過により紛失していることも多く、そのような場合登記申請できないのかという疑問も浮かびますが、別の方法で対応可能です。本記事ではその方法について解説をします。
①事前通知
②資格者代理人による本人確認情報作成
③公証人による本人確認制度
①事前通知
権利証や登記識別情報を添付せずに登記申請をすると自動的にこの方法が取られます。法務局から義務者(売主や贈与者など権利を失う側)に対し、登記上の住所宛に本人限定受取郵便の通知が送られます。その後、郵便局の窓口または通知の住所において本人のみが受取りをすることになります。(法人が義務者のケースの解説は割愛します)
事前通知を受け取りましたら、回答欄に署名捺印の上返送が必要になります。事前通知が発送されてから2週間以内での返送が必要です。
メリットとしては費用がかからない。デメリットとしては、登記申請から完了まで時間がかかり、手間もかかる。
融資が絡む他人間の売買では使われず、親族間売買や古い担保権を抹消する際に使われることが多いでしょう。
②資格者代理人による本人確認情報作成
この制度を使うのは登記申請代理を行う司法書士がほとんどだと思います。資格者と面談をした後、資格者が本人確認情報の書類を作成します。その際に、本人確認書類として提示する証明書は法定されています。
運転免許証、個人番号カード(マイナンバーカード)、旅券等(パスポート※申請人の氏名及び生年月日の記載があるもの)、在留カード、特別永住者証明書、運転経歴証明書
分かり易く言えば顔写真付きの身分証明書です。運転免許証かマイナンバーカードならお持ちの方が多いのではないでしょうか。これであれば一枚の提示で可能です。なお上記にはパスポートの記載がありますが、これについては住所の記載がないのでパスポート以外の証明書が望ましいです。
なお、上述した顔写真付きの身分証明書が無い場合は以下の書類を2点提示する必要があります。
国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済制度の資格確認書(書面によって作成されたものに限る。)、介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、基礎年金番号通知書、児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳又は戦傷病者手帳であって、当該申請人の氏名、住所及び生年月日の記載があるもの
なお、後期高齢者医療被保険者証は新規の発行が無くなり、「資格確認証」が発行されていますが、これもOKのようです。
メリットとしては時間がかからない。デメリットとしては費用がかかる(数万円と比較的高い)
③公証人による本人確認
この制度を利用したことはありませんが、(司法書士に登記申請を委任する場合)登記委任状に公証人の認証を入れてもらい、それを用いて登記申請をすることとなります。登記実務上それほど利用されている制度ではありません。登記義務者が公証役場に赴く必要がありますので、手続として迂遠なのかもしれません。
メリットは費用が比較的安い(数千円と比較的安い)。デメリットは公証役場に赴かなくてはならないといった手間がかかる。
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投稿者プロフィール

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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。
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