法定相続情報一覧図を活用しましょう

法定相続情報一覧図とは

簡単に説明すると、戸籍や住民票などの公文書の代わりとなる書類です。相続手続を各種の機関(法務局、銀行等)で行う際に、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍や相続人の住民票等の書類を求められます。ですが、戸籍や住民票の取得には費用が掛かりますので、それぞれ1通しか取得しないことが通常です。そのため、例えば法務局で相続登記手続を行った場合、1~2週間は戸籍等を法務局に預けている状態が続きますので、その他の手続が停滞してしまいます。その問題を解消するために、法務局にてタイトルの「法定相続情報一覧図」を作成します。

戸籍や住民票を一旦法務局に預けますが、1~2週間程度で戸籍等の情報を集約した1枚の紙に集約したものを発行してもらうことが可能です。無料で何部でも発行してもらうことができます(あまりに多いと登記官に理由を求められることがあるので、必要枚数のみに留めたほうがよいでしょう)。そして、相続手続が必要な機関にそれを提出することで戸籍や住民票の代わりとすることができ、戸籍の束を持ち回りで提出する必要がなくなりますので、かなり時間短縮することができるようになります。

誰が作成の申出人となれるか?

相続人が申出人となることができます。申出人から代理人に委任することも可能です。代理人に委任する場合は、親族のほか、八士業(弁護士,司法書士,行政書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士)に依頼することができます。

なお、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸籍謄本類を提出できない場合は法定相続情報一覧図の作成をすることはできません。

なにが必要書類か?

法務局にて用意している以下の表をご覧ください。

                              ※法務局資料より

基本的には被相続人の【出生から死亡までの連続した戸籍・住民票除票(または戸籍附票)】、相続人の【戸籍・(住所記載を希望するなら)住民票・身分証明書】が必要になります。

代理人を立てる場合は委任状が追加で必要になります。

法定相続情報一覧図、申出書の作成

戸籍類を法務局に提出したからと言って、その内容を作成してもらえる訳ではありません。内容はご自身で作成することとなります。

コチラに法務局の該当ページのリンクを貼りましたので、ダウンロードして作成するのが早いです。

過去には手書きで作成しているお客様もいらっしゃいましたが、パソコンの環境があれば法務局が用意した様式を利用して作成するのが無難でしょう。

法定相続情報一覧図と併せて、「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」という書類をダウンロードして記入しておきます。こちらも法務局のサイトからWordファイルでダウンロード可能です。

提出先はどこ?

 以下4つのうちいずれかです。

 ①被相続人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
 ②被相続人の最後の住所地
 ③申出人の住所地
 ④被相続人名義の不動産の所在地

このうち最寄りの法務局に提出していただくのがいいのではないでしょうか。

注意点

法務局のサイトを見る限り、【法定相続情報証明制度において交付する一覧図の写しは,被相続人の死亡に起因する相続手続及び年金等手続にのみご利用いただけます。】とだけ記載があります。相続登記手続で利用できるのは間違いありませんが、銀行その他の機関においては、手続の際に「法定相続情報一覧図」を戸籍類の代わりとして利用できるか確認しておいた方が良いでしょう。

また、戸籍については特に何もせずとも返却されますが、住民票は返却されません。

返却を希望される場合は、住民票のコピーを1枚用意し「原本と相違がない」旨を記載し、申出人の記名をしてください。それにより住民票は返却される運用です。


今回は法定相続情報一覧図について記事にしました。比較的新しい制度のため、馴染みが無いかもしれませんが各種手続の際にかなり時間短縮ができますので、相続手続が長引きそうな場合はぜひ活用をご検討ください。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。