登記上の住所と最後の住所が違うときはどうするか

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

相続対象不動産の現在の名義人(亡くなった方)の最後の住所と、登記されている住所が異なることはよくあります。法務局としては、「住所」「氏名」で名義人を特定していますので、住所が異なれば同姓同名の別人であるという判断をせざるを得ません。

登記名義人が生前、引っ越しのたびに住所変更登記をしているのであれば問題ないのですが、そうでない場合は相続登記の際に登記上の住所から最後の住所までの変遷を証明しなければならず、場合によってはかなり手間がかかる作業になります。

登記上の住所から最後の住所まで、一度の転居で住所移転をしている場合であれば住民票の除票を取得することで、前住所として登記上の住所が記載されていることが多い(最近は記載されていないケースもあるそうです)ため、住民票の除票を一通取得することで住居の変遷を証明することができます。ところが、複数回転居をしている場合は住民票の除票では証明刷ることができません。その場合は「戸籍の附票」を取得します。戸籍附票は、現在の本籍地に籍を置いているときの住所の変遷を記した書面なので、転籍をあまりしない人であれば戸籍附票で住所の変遷を証明することができる可能性が高いです。

ところが、転居の都度本籍地を変更する方もおり、その場合はその数だけ戸籍の附票(戸籍の附票の除票「戸籍の除附票」と言います)を取得する必要が出てきます。なお、戸籍の除附票は保管期間後は廃棄されますので、それ以上住所を追えないということもよくあります。

そのような場合の対応ですが、以下のようになります。


住所証明書としては以下の1~4いずれかの書面がこれに該当するとされています(平成29年3月23日法務省民二第175号通達)。

1.登記記録上の住所が本籍に記載された⼾籍謄本

2.本籍及び登記記録上の住所が記載された住⺠票の写し

3.登記記録上の住所が記載された⼾籍の附票の写し

4.被相続⼈名義の所有権に関する登記済証

多くのケースでは1~3で住所の繋がりの証明ができるのですが、そこで住所が繋がらず4の提供もできない場合、相続人全員の上申書等を提出するなどの対応が必要でした。

ところが、相続人全員の上申書を提出しなくても登記申請ができるとする新たな通達が発出されました【令和5年12月18日法務省民二第1620号通達】

本通達により、以下のA及びBの書面を添付すれば4または相続人全員の上申書がなくても相続登記の申請をすることができるようになりました。

 A.固定資産税の納税通知書又は評価証明書
 B.不在籍証明書及び不在住証明書


なお、このあたりの書類については判断が難しいため、司法書士にご相談いただくことをお勧めいたします。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。