自筆証書遺言の書き方

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

「遺言書」とは、被相続人が生前に、自身の財産の処分や分け方を指定しそれを書面として作成したものです。「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方法を「普通方式遺言」と言い、これらが遺言書の方式として多く利用されます。このうち、公証人が関与しない自筆証書遺言の記載方法について解説します。

なお、「遺書」は、自ら命を絶つ際にその理由や、親しい間柄の人に対しての想いを綴られた書面であり、遺言書とは意味合いが異なり、法的な効力が発生するものではありませんが、内容や形式的に遺言書の様式を満たしていれば遺言書としての効力が発生します。

全文を自書する

PCの文書作成ソフトやワープロなどで文章を書いてはいけません。全て遺言者自らの手で書く必要があります。ただし、財産目録について「のみ」自筆ではなく印字したもので構いません。以下に参考画像を掲示します。

法務省HPより引用

不動産や有価証券、預貯金などの財産をまとめた文書を物件等目録と言いますが、これについては上述した通り、自書でなく印字したものでも構いませんが、下部に署名押印が必要になりますので、複数枚に渡る場合はすべてのページに署名押印をする必要があります。

また遺言書全体としてページ数が複数枚に渡る場合、全て合綴して契印をするべきか民法上言及されておりませんが、個人的には実印で契印しておいた方が無難と考えます。確かに過去の判例で契印は不要であると示したものもありますが、作成の際に契印しておくことで余計な疑義を生まずスムーズに事が運ぶと考えます。

日付を自書する

こちらも自書することが必要です。日付印を使うことによって遺言書の要件を満たさず無効となることもありますので、自書します。

法務省HPより引用

注意事項欄にも記載がありますが、年月日は具体的な日付で記載します「令和6年5月吉日」といった記入は認められませんのでご注意ください。

氏名を自書する

「高」「髙」や「浜」「濱」「濵」など、旧字体を普段略して記載している方もいるかと思いますが、戸籍に記載されている通りの文字でご記載ください。また、ペンネームや芸名など、本人が特定できればよい旨の判例もありますが、原則として本名での記載をお勧めします。遺言の執行が困難になるためです。

押印する

押印する印鑑の種類について法定されておりません。実印は勿論のこと、認印でも構わないとされています。また、拇印でも構いませんが、極力実印で押印することをお勧めします。実印以外ですと遺言書の信用性が低くなり、拇印ですと証明が難しくなります。余談ですが※花押(※一文字のサインみたいなもの)は認められていないようです。

注意点

文例については上記に引用した画像の通りなのですが、自書が要件ですので、できる限り文章はコンパクトにする必要があります。遺言書を作成する際に書損じによる訂正は方式に則って行えば問題ありませんが、訂正方法を誤れば遺言書自体が無効になる可能性があるため、間違った場合は一旦破棄して最初からやり直すことが望ましいのですが、作成の終盤で間違ってしまった場合負担が大きくなります。何度か誤記をして作成自体が難しいと判断した場合は、公正証書遺言に切り替えるなども視野にいれるといいかもしれません。

封筒に入れる

自筆証書遺言が書きあがりましたら、これを保管する必要があります。その際に書き上げた遺言書の用紙をそのままではなく、封筒に封入して保管しましょう。封筒に入れること自体は有効要件ではないですが、紛失や変造を防ぐのに役立ちます。

封筒の表面には「遺言書在中」と記載し、裏面には「開封を禁ずる この遺言書を遺言者の死後すみやかに家庭裁判所に提出し、検認を受けること 令和年月日 遺言者 山田太郎㊞」のよう記載をします。このように封筒に注意事項を記載することで、勝手に開封されることを予防します。なお、封筒の封緘印としても実印を用いるとよいでしょう。 


いかがでしょうか。今回は自筆証書遺言の書き方について解説をしました。当事務所でサポートをいたしますので、詳しい書き方についてお知りになりたい方はぜひお気軽にご連絡ください。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。