遺産相続させたくない相続人がいるときはどうする?

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

関係の良くない親族が自分の推定相続人だったとします。人間ですからその推定相続人に相続をさせたくない場合だってあると思います。その場合に、相続をさせない方法を考えてみましょう。以下、相続させたくない相続人を「長男X」とします。

遺言書を書く

まずは遺言書を書く必要があります。推定相続人がX含めて2人いる場合は、X以外の相続人にすべて相続させる旨、推定相続人が3人以上であればX以外の相続人に対して相続分の指定をしまうなどの内容を盛り込みます。

推定相続人がXのみの場合もあると思いますが、その場合は第三者に遺贈する旨を書いておく必要があります。

問題点

上記の内容で遺言を書いた場合、Xは相続分を受取ることができません。Xには最低限相続することができる「遺留分」が保障されておりますので、X以外の推定相続人や、遺贈を受けた人(受贈者)はXから遺留分侵害額請求という請求を受け、金銭を支払わなければならない可能性が残ります。

対策

では、X以外の推定相続人や受贈者は必ず遺留分を支払わなければならないかというと、必ずしもそうではありません。

相続人の「廃除」をしておくことでXの遺留分を奪うことが可能です。廃除は家庭裁判所へ申立てし審判を受けることが必要になりますが、認められればXを廃除することができます。

なお、Xが被相続人の兄弟姉妹の場合は元々遺留分がなく、廃除をすることができません。遺言書にて他の推定相続人へすべて相続させるか、第三者に遺贈するかのいずれかの内容を遺せばそれで十分です。

廃除の方法

廃除の方法は2通りです。

①生前廃除

②遺言廃除

①の生前廃除は、文字通り生前に被相続人自らが家庭裁判所に申立てをして、Xの廃除を認める審判を受ける方法です。被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に必要書類を提出することとなります。概ね以下の書類の提出が求められますが、追加書類を求められる場合もあります。

・推定相続人排除の審判申立書
・申立人である被相続人の戸籍謄本
・廃除したい推定相続人の戸籍謄本

審判確定後、10日以内に戸籍の届出をする必要があり、被相続人が、廃除された【相続人の本籍地】または【申立人の住所地の役所】に下記書類を提出して届出をします。

・推定相続人廃除届
・審判書謄本及び確定証明書
・届出人の印鑑
この届出がされると、廃除された相続人の戸籍に、廃除された旨が記載されます。

②の遺言廃除ですが、遺言書の中に「遺言者の長男Xは、遺言者に対して~するなどの虐待があったため、遺言者は長男Xを廃除する」など記載しておく必要があります。被相続人の死後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てをします。そのため、遺言廃除をしたい場合は、遺言で遺言執行者の指定をしておくべきです。

廃除は簡単にできるのか

ここまで説明をしてきましたが、相続権という重大な権利を奪うことになる制度のため、簡単に行使することはできず、以下の要件を満たす必要があります。

・被相続人に対する虐待や重大な侮辱がある
・推定相続人にその他の著しい非行がある場合

上記について申立人側で主張・立証し、家庭裁判所が総合的に判断した上で審判しますが、廃除が認められる可能性は統計上、申立てされた件数の2割程度のようです。

廃除が認められるのはそれなりに難しいと言えるでしょう。

注意点

上記をクリアし無事にXの廃除が認められたとして、Xに子供(被相続人から見て孫)がいた場合は、代襲相続が発生しXの子供が相続人になります。このとき結局Xが遺産を相続するのと変わらないと考え、代襲相続人を廃除したいと思うのではないでしょうか。

しかし、このような場合でも、代襲相続人からも虐待や侮辱を受けていたという事情が必要になります。感情的な理由だけでは、代襲相続人を廃除することはできません。


廃除については様々な事情から判断しなくてはなりませんので、検討されているようでしたら専門家に相談することをお勧めいたします。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。