相続分の譲渡
札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。
タイトルにある「相続分の譲渡」ですが、例えば複数の相続人がいる場合に、相続人である自分の相続分を包括的に他の相続人に譲り渡すことです。
例えば遺産分割協議をする場面において、相続人が10人おり、さらに全員が日本全国に散り散りになっている場合はどうでしょう。仮に被相続人の遺産がマンションの一室しかないような状況で、10人でその一室を共有するのは現実的に考えづらく、各相続人に相続が開始すればあっという間にそのマンション一室の権利関係が複雑化します。そこで被相続人の生前に近しい一人の相続人が全てを取得するような結論に落ち着きたいのですが、相続人全員で遺産分割協議書を作成するのが大変な場合に「相続人譲渡証書」を作成し、印鑑証明書を添付することで一人の相続人へ相続分を譲渡することが可能になります。
また、共同相続人の中に認知症の方がおり成年後見人等が選任されていない場合、遺産分割協議をすることができません。そのような場合にある程度手続を進めておくというイメージで活用できると考えます。
例としては、
①A~Jさんまで10名の相続人がいるとします。(相続分はそれぞれ1/10ずつ)
②Jさんは認知症で成年後見人を選任していないため、全体での遺産分割協議ができません。
③相続財産はマンション一室のみ
上記の例ですと、全員で遺産分割協議ができないため法定相続分(1/10ずつ)に則って相続登記を入れることになります。以下のイメージです。
この状況で全員が高齢者の場合、数年後に共有者の数が数十人になる可能性もあり得ます。ですがJさんは認知症のため、成年後見人等の法定代理人が選任されない限り遺産分割協議に参加することができません。また、遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、このままでは有効な遺産分割協議はできません。
そこでB~Iさんが、上記で解説した通りAさんに「相続分の譲渡」をした場合はこうなります。
この状態で相続登記をすることができるようになりますので、法定相続の場合よりも後々の手続よりは随分と簡素になります。
登記先例(昭和59年10月15日付法務省民三第5195号民事局第三課長)にもそのようにあります。
相続分の譲渡についてはぜひ当事務所までご相談ください。
投稿者プロフィール
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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。
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