自筆証書遺言の作成方法

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

昨今、遺言書作成の件数が多くなっているようです。先日、公証役場において待合室のベンチに座っていたところ、遺言書を作成したいということでそのパンフレットを求めに来た方がいました。その方は公証役場に来るくらいですから公正証書遺言を作成する予定なのでしょうが、費用がかからない自筆証書遺言はもっと件数が増えているのではないでしょうか。

巷には遺言書作成に関する書籍がたくさん販売されており、無料相談に来られるお客様の中にもそういった書籍で事前に調べた上でご相談される方もいらっしゃいます。法律の専門家に相談されることなく遺言書を作成され、死後その遺言書が無効ということも可能性はありますので、本記事では自筆証書遺言の作成について解説をします。

遺言の内容を考える

当然ですが、まず遺言書に遺す内容を考えなければなりません。何を書けばいいのか迷うかと思いますが、自分自身の財産をどのように処分するかを形式を満たしつつ自筆で書き記したものが自筆証書遺言です。

そのため、まずは自分の財産(不動産、金融機関口座、自動車、高価な動産等)を把握し、それらを誰に引き継がせたいかを考えます。これは相続人以外の第三者への遺贈でも構いません。注意しなければならないのは、あまりに特定の人物に偏って財産を承継させる内容の場合、財産を承継できなかった相続人が、財産を多く承継した人物に対し、遺留分侵害額請求をすることがあります。また、家族に対する感謝の言葉などについても「付則」という形で盛り込むことも可能です。

財産のリストアップ

上記に記載した通り、自分の財産をどう分けるかという趣旨であるため、財産目録を作成しそれを把握しておく必要があります。ただし、ある程度高額な財産のみで結構です。不動産・自動車・金融機関口座・株式等の有価証券・5万円を越えるような動産(貴金属や宝石、時計など)。安価なボールペン1本まで含めてしまうと、財産目録が完成しません。なお、財産目録についてはパソコンを使用し、印字したもので構いません。

また、不動産についてのみ記載したいといったようなケースにおいては、それだけ記載することも可能です。記載されなかった財産に関しては従来通り遺産分割協議によって遺産分けすることになるでしょう。

記載すべき内容

財産目録を作成しましたら、遺言書を作成します。前提として、財産目録以外の部分はすべて自筆する必要があります。最も注意しなければならないのは、以下に掲げる3つの要件を必ず満たさなければなりません。

①全文 ←遺言書の内容そのものです。書かなければ当然無効です。

②日付 ←遺言書を作成した日付です。いつ作成したか明確であることが必要ですので、「令和何年何月何日」「20××年何月何日」など、年号や西暦を含め書くようにしましょう。なお特定ができない「令和何年何月吉日」というような記載方法は無効になる恐れがありますので、必ず具体的な日付を書きましょう。

③氏名 ←書いた人物を特定できれば芸名やペンネームでも良いとされておりますが、個人的には本名で作成したほうが疑義がなく良いかなと思います。

以上の3点を忘れずに「自筆」します。一つでも欠けると遺言書自体が無効になります。

その他の形式

記載内容以外で最も重要なのが、印鑑を押すということです。ここで民法の条文を掲げます。

【第968条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。】

上記の全文、日付、氏名を記載し、ハンコを押せということなのですが、ここでいうハンコは実印でなくても構いません。認印でも構いませんし、判例では拇印でも構わないとさえされております。ですが、個人的な見解としては実印を押して、印鑑証明書と併せて封書で保管をしておくことが最も後日の紛争予防になると考えます。(認印だと極端な話偽造の恐れがありますし、拇印だと本人の指紋との証明が難しいため)

なお、遺言書が数ページに渡る場合については財産目録を含めてホチキスで綴じて、各ページを印鑑で契印することが必要です。

保管方法について

ご自身で保管しても結構です。ただし貸金庫での保管は止めておいた方が良いでしょう(開披するのに相続人全員の委任状が必要になったりして大変なケースが多いため)。または、その遺言書によって一番利益を受ける人に保管を依頼するのも一つの方法ですが、遺言者の死後、家庭裁判所において検認手続が必要になります。そのため、親族や第三者に預ける場合は、少なくとも遺言者が亡くなったことをすぐに知ることができる人物が望ましいでしょう。また最近、法務局における保管制度もあり、費用も安価であるためこの制度を活用してみるのも検討してみてください。

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投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。