取締役と会社の不動産取引
札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。
会社が所有する不動産を、その会社の取締役に売却するケースについて解説します。これは通常の取引に比べ集める書類が多くなります。
会社が所有する不動産を不当に安く取締役へ売ることができてしまうため、株主総会や取締役会などの決議が必要になります。以下に必要書類をまとめます。
登記原因証明情報
会社が取締役へ不動産を売却した事実があったことを証明する書類です。そのため、売買契約書などが考えられます。司法書士が申請する場合は、法務局へ差し入れる方式の書面を作成することが多いです。
登記識別情報通知(登記済権利証)
元々の不動産所有者である会社が不動産を取得した時期によって、手元の書類が登記識別情報通知か登記済権利証が異なるのですが、いずれかが必要になります。
印鑑証明書
不動産を手放す会社の印鑑証明書です。ただし、令和2年3月30日から、申請書に会社法人等番号を記載すれば、印鑑証明書の提供を省略することができるようになりましたので、提出することはないと思います。
住所証明情報
不動産の買主である取締役個人の住民票や戸籍の附票です。基本的にここに記載された住所が所有者の住所として登記簿に反映されますので、印鑑証明書も住所証明情報として活用することが可能です。ちなみにマイナンバー記載のものは避けたほうが良いですが、もし誤ってマイナンバー記載のものを取得した場合はそのまま登記申請に使用してください。マジックやサインペンでマイナンバーを黒塗りにはしないようご注意ください。
評価証明書
毎年春頃に届く固定資産納税通知書の写しや、役所の固定資産税を管理している窓口で取得することができる評価証明書の写しを添付します。登録免許税の計算の根拠を法務局へ提示するイメージのものなので基本的に原本を添付する必要がありませんが、法務局によって添付すら必要がなかったり、原本を求めてくる法務局があります。
代理権限証明情報
ここでは司法書士に登記を依頼する場合の委任状を指します。不動産売主である会社は届出印を押印、買主である取締役は認印を押印します。
ここまでは通常の不動産売買の書面と同様です。上記に加えて以下の書面が必要になります。
承諾証明情報
会社と取締役の不動産取引は利益相反となるため、売主である会社の議事録が必要となります。取締役会を設置している会社であれば取締役会議事録、取締役会がない会社であれば株主総会議事録です。ここで、会社と取締役との間での不動産取引についての承認決議を行います。
取締役会議事録の場合、出席役員個人の実印を押印します。株主総会議事録で株主の数が多く、議事録に株主の印鑑を押しきれない場合は各株主に同意書をもらっても良いです。さらに、それらの書面に押印した実印の印鑑証明書を添付することになります。
印鑑証明書については発行後3カ月以内といった制限はないのですが、この印鑑証明書は登記申請後に原本が返却されませんのでご注意ください。
以上が会社と取締役の不動産取引の必要書類となります。
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投稿者プロフィール

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令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。
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