個人事業主の事業承継(営業譲渡)について

札幌宮の森の司法書士、鷲頭です。

個人事業主の事業承継については、相続と併せて件数が増えていくことが想定されます。そこで当事務所でも今後、個人事業主の事業承継について力を入れていきます。

そのように考えた背景ですが、とあるラーメン屋さんがテレビの取材を受けていた際に、「後継者がいないので私が引退したらこのお店も閉じる」と仰っているのを耳にしたことです。周辺の住民や、近くの高校に通っている生徒(私もこの高校の元生徒です)に人気のあるラーメン屋であったため、そういった方々の思い出の場所が無くなってしまうことが寂しく感じるとともに、経済活動として誰かが承継してくれればいいのになとぼんやりと思ったことが始まりですが、その後実務を通して様々な相続案件を重ね、多くの人と出会うことにより、個人事業主の事業承継業務に力を入れていきたい思いが強くなってきました。

承継の方法

事業承継それぞれの段階でするべき手続は多いのですが、営業譲渡契約書を締結した上で以下の届出を行います。

①事業を譲渡する側が廃業届等

②事業を承継する側が開業届等

大まかですが、大枠はこうです。

屋号の承継

個人事業主であっても商号の登記は可能ですので、商号登記をしている可能性があります。その商号を引き継いだ場合、商号使用者を変更しなければなりませんので登記申請をすることとなります。

雇用契約はどうなる?

従業員は旧経営者と雇用契約を締結しておりますので、一旦これを解除して、新経営者と雇用契約を締結する必要があります。

事業所の設備の所有権についてはどうすべき?

事業所には多くの動産(机、椅子や棚などの什器類、PC、書籍)があります。それらの所有権は現経営者にある場合は、後継者に対する贈与・売買により所有権を移す必要があります。年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからないため、贈与で対応できる場合もありますし、110万円を超える部分については売買にするなど対応ができます。いずれの場合にしても、贈与契約書や売買契約書を作成することをお勧めします。

なお、複合機や車両などリース契約の可能性が高い動産もあり、その場合リース会社に所有権があるため確認が必要です。

まずは事業用の物品リストを作成して、それぞれの明細を出すところから始めてみましょう。


今回の記事では細かな部分は省き、大枠について記載しました。今後の記事において、提出すべき届出の種類について記載をしていきます。

投稿者プロフィール

鷲頭正明
鷲頭正明
令和2年度司法書士試験合格。東京都内の司法書士法人、司法書士・行政書士事務所で実務経験を積み、令和5年生まれ故郷である札幌で司法書士事務所開業。
会社・法人登記及び相続関連業務を得意としています。